心臓がとまるまえに

30日。健康診断。オジイチャン先生に、「コレステロール値がいかんね。薬飲まなければいかんレヴェルだよ。心臓止まったらもともこもないからね」と怒られる。ということで、梨が食いたい、などと恥ずかしげもなく言っていてはいけないらしい。ということで、りんご、食いたいな。

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29日。実りの季節を迎えている「梨」や「リンゴ」が台風で台無しになってしまわければよいが……などとニュースを見ていて思う。傷がついていても、ワシはまったく気にせずに食すから良いのだが、そもそも傷がついた果実はマーケットの流通に乗らなくなってしまうようだから……。梨、食いたいな。

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28日。Peter Pan in Kensington Gardensを読了する。

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27日。『トニー谷、ざんす』を読了する。「現象」というものは、リアルな本人を置き去りしてどんどん拡大し、ある臨界点にまで達すると、突然忘却の淵にたたき落とされたり、敵意の的にされてしまったりする。トニーが語るトニーイングリシュは、エーゴと日本語をハイブリッドに混淆させて、植民者メリケンの言語を滑稽なものへと占有すると同時に、植民地ジャパンの存在を滑稽に戯画化してみせたなどと大真面目に語るつもりはないものの、ボードビリアンとしてのトニー谷は、なんともpostcolonialな存在だなと思ったり、思わなかったり……。

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26日。アメリカ南部(でのフォークナー墓参)から帰ってきた後輩ジョイス研究者氏と、本来やらなければならないことをほったらかして、おしゃべりに興じる。

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25日。「よくヒトに道を尋ねられる」という方は世のなかに多々いらっしゃると聞く。ワシも結構な確率で道を尋ねられる。ロンドンにはじめて行ったときイギリス人のおばあさんに地下鉄で、韓国にはじめて行ったとき韓国人のおばさんに地下鉄で(しかも、英語で返答したら、つぎは片言の日本語で応対された)、アメリカ人の気のいいお兄さんにアメリカの大学内で(「ショップどこ?」みないに)、フィジーに行ったときオーストラリアの若い奥さんにpleasure boat乗り場みたいなところで、実家から家に帰るときに最寄りの駅のホームで中国の人に(「この電車、空港行く?」みたいなことだと思う。ことばが理解できなかったけど)。さらに付け足すなら、真夜中の御茶ノ水を歩いていたら、スペイン人に「写真とってくれ」と言われたこともある(スペイン語だったが、カメラを手渡されたのでわかった。いちおう第二外国語スペイン語だったけど……)。

本日、自宅最寄りの駅の階段を下っていたら、前方から上ってくる東南アジア系のお二方に呼びとめられる。どうやら降りるべき駅を通り越してしまったらしい。どうしたらよいかと英語で尋ねられたので、ひととおり英語で返答したら、とても驚いた顔&安堵の笑顔をされる。この片田舎の駅に出現したジャパニーズの口からエーゴが漏れ出てくるなどと期待していなかったのだろう。その後、なんとかワシのエーゴでも理解していただけたようで、電車にのるときも「ありがとう」と感謝され、下車した駅のホームから走り去ろうとする電車内のワシにも謝意の表明があり……見知らぬお二人からなんとも過分なお礼をいただく羽目になってしまう。それにしても、彼らはけっこう厚手の長袖を着ていたのだが、暑くはないのかな。ワシは半袖でも死ぬほど暑いぞ。

八月が終わるぞ……。