超大作/『エッグ』

19日。研究室の掃除をする。

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18日。会議、会議、会議、会議。これから開催予定の会議用に発注する昼食について、仕出し弁当にするか、にぎり寿司にするか、テリー教授が真剣に相談してくるので、うんざりして、フィッシュ&チップスとギネスにしましょう、などと言ったとか、言わなかったとか……。

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17日。あるメールがやってくる。昨日、情熱氏からメールがやってきて、軽く愚痴めいたコトバがそこに書かれていたので、こちらも軽く偶感をしたためたメールを返しておいたのだが、それに対する返礼メールがやってきたのだ。具体的な内容はここにしたためることかなわず、なのだが、このメールが、読めども読めども終わりが来ず、お終いはブラックホールに通じているかと思われるくらいの超大作で、しかも末尾に、涙が出そうになりながらこのメールを書いている、というようなコトバが添えられている。えーと、ワシのメールがなにか共感を呼びおこしてしまったようですが、ワシはなにも同調しとらんし、なにも慰めとらんし、なにも肯定しとらんし、ただ、現状が良くなるように協力してやって行きましょう的あたりさわりのなさを披露したにすぎないのですが……。メールでのコミュニケーションは難しいですね。この超大作の到来がなにかの予兆でないことを、せつに祈る。

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14日。『エッグ』@東京芸術劇場。再演だが、初演は見ていないので、ワシにとっては初演となる。4年をひとつの単位として時は前進しているかのように思われるが、そのような時の進行は実のところ時の後退であって、それととももに過去や内奥が表層に浮上してきて、仮に真実とでも言っておくしかないようなものが徐々にあらわになっていく。進行/後退の転換を、それとは明確に気づくことなく、観客はともに生きることになる。初演と再演のあいだに東京オリンピックの開催が決定するという偶然があった、とパンフレットに記されていたが、ツマブキ氏演じる主人公の名前がアベであるということも、なにやら宿命的なallusionをそこに読みとってしまいたくなるような、偶然が用意した現実の変化と言ってよいかもしれない。役者のなかで初見なのは、件のツマブキ氏と深津絵里さんだが、後者は大変すばらしい歌声をもつ稀有な女優であると知った。つまり、大変魅了されたということ。一方、いっしょにくっついて来たドーキョニンが、芝居冒頭に出てくる女装の野田秀樹を見て「スチ子そっくりだった」と連呼するので、「この人に芝居を見せはいけない」と思った。その後、予約してあった近くのフランス料理屋で、フォアグラを食ってしまう。聖ウァレンティヌスの日ということで、コーヒーのスプーンには小さなチョコレートがのせられていた。おしゃれか。

春休みにはなにかが起こる……。