三文オペラ

28日。最近、眼の疲れが尋常ではなく、目薬をすると痛い。とても「来たー」などと悠長に叫んでなどいられない。古くて恐縮なり。わからなければ、わからなくてもよい。

春のご陽気で、6時半現在の室温22.2℃という贅沢を甘受する。

明治から昭和初期にかけてArthur Pineroは日本で「近代(社会)劇」として翻訳されているようだし、研究社英米文學評傳叢書のひとつとして昭和11年には『ピネロ』という書物が出ているようだ。このツルッパゲのオッサンも、かつては楽園を経験したわけですね。20世紀に盛んだった〈文学キャノンの発掘〉とは反対に、煉獄に追いやられたPineroは、〈文学キャノンの忘却〉の第一候補だな、と想う。

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27日。ブレヒト三文オペラ』(Orquesta Libre、神田京子柳原陽一郎、大橋一三)@千種文化小劇場。円形舞台をぐるっと一周するかたちで配置されたオルケスタ、その中央でうたう柳原、残りの空間で芝居をする大橋、ひとつ下がったところに講談の神田。講談が調子の良いナレーションとアドリブをかましつつ、オルケスタと歌が美しい調べをそこに添える。本日の物語の進行を支えていたのはひとりの役者であった、と言えるかもしれない。ワシはといえば、オルケスタのリズム体に関心の多くを集中させていた。なぜなら、ドラムが芳垣安洋で、ベースが鈴木正人だったから。オルケスタは秀逸だったが、なかでも眼のまえにいたパーカッションの岡部洋一がすばらしかった。終演後、ロビーでこのオルケスタが演奏するデューク・エリントンのCDを購入し、近くにいた芳垣氏にサインをしてもらう。テンションが上がって、無言かつ挙動不審になる。

その後、大学にそそくさと戻って、現実的なお仕事をこなす。

今日も眠い……。