批評とは?

高田康成『クリティカル・モーメント−−批評の根源と臨界の認識』(名古屋大学出版会,2010)を読了する。「だろう」という文末表現を最大の文体的特徴として装填する本書の目論見は、つぎのとおりなり。

ここで行ったささやかな作業は、「批評(クリティシズム)」とは「ヨーロッパの批評精神」の伝統と類縁関係を有し、その「批評精神」の伝統は、本来的に超越的価値を前提として、その上で認識世界の「臨界」を見定めるところにある、ということを具体的に確認しようとしたことにすぎない。(378ページ)

キリスト教や古典との関係において世俗がひきおこす齟齬の契機に立脚したものこそが批評にほかならないのであり、価値を相対化して喜んでいるようなものは批評の名に値しないそうです。したがって、クリティカル・モーメントというのは、なんらかのかたちで体系化できるような理論ではなく、つねに批評対象と伝統に寄り添ったかたちで行われる実践的な批評行為にならざるを得ないようです。なによりも、ギリシア語・ラテン語が読めないなんて論外なようです。もっと勉強しろ、ワシ。

いかにも……。