さらば

6日。再試の女子の無関心が崇高さを帯びる。ワシの凡庸さではもう太刀打ちなどできようはずもない。さらば。
その後、約700人分のクラス分けを行い、労働をめぐるミーティングに出る。

夜が本格的な闇を身にまとうまえに空を見上げてみると、そこに一本の飛行機雲が存在していることに気づく。昼と夜が曖昧になった頃合いに姿を見せた一本の白い線の舞踏に、奇蹟的な美しさを感じる。ことばを羅列してそれを描写してみようとするあらゆる努力を一瞬で放棄させるという意味で、それは美しいとしか言いようのないものなのだ。美をまえにした敗北ほど甘美なものはない。

さよなら、さよなら、さよなら……。

* * *

5日。再試の男子、あらわれる。再試の女子は未だ盲目的におのれの得点を愛す。

お嬢さんから、彼女の労働をめぐる今朝の戦いについて聴く。お嬢さん、強し。

午後は、約700人分のクラス分けに向けてココロの準備をする。もちろん、ココロの準備をするのはワシひとりで十分なのであり、それはなぜかと言えば、昨年のこの時期に名ばかり氏から「クラス分けお願いします」とあっさり言われたからであり、さらに、そのあっさりしたことばは意外とあっさりともしていなかったようで、それはなぜかと言えば、今年はその「クラス分けお願いします」ということばが音声として発せられる機会が皆無だったにもかかわらず、ワシの耳にはそのことばの谺が確実に鳴り響いているからである。残存しているのは過去の声か、それとも、これから発せられるはずの未来の声か……。いずれにしても、この谺の宛先はワシの耳以外にはない。

耳の孤独……。