別の時を生きる

今日も晴れ。そぎ落とされた単純なことばが、幾百の飾り立てられたことばよりも真実を伝えることがある。

羊たちは、それぞれ背中にペッタンコと紙を張られる。紙には著名人や著名なキャラクターの名前が書かれており、まわりにいる人にYES/NOで答えられる質問をして、自分が何者であるかをあてる。有能なインストラクターが提案するこのゲームに、羊たちは、これまででいちばんの食いつきをみせる。そして、羊たちのリクエストに応えて、予定外に2回も行うはめになる。ただ、羊たち、英語じゃなくて日本語しゃべってるよ……。

後半は、漫画が描かれたプリントが配られる。その漫画の簡単なストーリーをそれぞれが英語でつくってみる、というのが次のプラクティス。もちろん、英文を書くうえでのヒントとなるプリントが配られ、辞書もつかってよいという指示が与えられる。羊たちにはかなり高等なプラクティスで、結局、日本語を話してしまう羊、電子辞書くんで検索した例文そのままをつなぎ合わせる羊、音声機能をつかって電子辞書くんに例文を音読させる悪ノリ羊、苦笑する有能なインストラクター、あきれる羊飼い、といった群像模様が展開される教室に変貌する。ひとり冷静な仕事ぶりを発揮するのは、電子辞書くんだけですわ……。最後に2人以上に自分のつくったストーリーを語って聞かせるよう指示が出されるが、収拾つかず、といった感じで授業は終わる。

午後の授業までのあいだに、相方と連れ立って、花束の予約注文のために花屋さんへ出向く。感じの良いオバチャンが羊飼いに愛想よく対応してくれる。Oregon Coast帰りによったレストランのオバチャンといい、この花屋のオバチャンといい、接客業を営むアメリカのオバチャンは、誰もがとても親しみやすくて親切だ。昨日行った古本屋のオバチャンも羊飼いにニコリとしてくれた。あなたたちの笑顔、忘れませんよ。

花屋からの帰り道に、相方のケータイにボスからの連絡が入るので、直接ボスのオフィスに出向く。トラブル発生かとビクビクするも、これからの予定の再確認で用件は終わる。このボス(オバチャン)も究極的に良いひと。

午後はConversation partnersの時間。オレゴン大学の学生につれられてキャンパス内に羊たちが散っていく。一方の羊飼いは、またしても居眠りをし、その後、カフェで本を読んで時をすごす。本を読んでいると、近くのテーブルに座っている日本人女子大生とアメリカ人女性の英語が地獄耳に入ってくる。ちゃんとコミュニケーションが成立するって良いですね。

地獄耳を閉じてふと見上げると、なにかフワフワした植物のようなものが、夕暮れの風に舞っているのが眼に映る。ユージーンを流れる時の緩やかさを象徴するようなその動きに、しばし見とれる。別の時を生きることの大切さを思う。

今日も夕食後の定例ミーティングでおしまい。羊たちだけは居残ってイベントに向けての話し合いをはじめる。もう日程の半分が過ぎたことになる。あ、今日の昼食はサンドウィッチをやめてバイキング形式の食堂でサラダをたらふく食べました。夕食はサンドウィッチにしました。

時と仲直りしなくては……。