甘美じゃない

今日も飽きるくらいによく晴れる。昨日とかわらない天気が今日もつづき、そして、今日と変わらない天気が明日もつづくのは確実だ。こんなときは変化を求めて行動するしかない。そうでなければ、天気の凡庸さに、生活が飲み込まれてしまうことになる。白日の狂気に身体をあずけるかわりに、経験を通して身体に呼吸させつづけるしかない。そういうわけで、少し早起きして集合時間10分前に所定の場所に出向く。決して昨日の反省ではない。決して。

有能なインストラクターの今日の仕掛けは、ワード・ゲーム。今回のゲームは、昨日の授業にでてきた英単語なかから、文字数だけをヒントに、それがどの単語かを推測してあてるという高度なゲームである。インストラクターは、羊たちを指名して、それぞれアルファベット1文字を推測させる。はずれた場合、1回ごとに、黒板に書かれている絞首刑台に、頭、体、手、足という順番で人の各部分が書き込まれていく(人のパーツが完成したらおしまい。これをHangmanというそうです)。羊たちは意外にそつなくこなし、死刑執行を阻止する。

その後、オレゴン大学の学生との教室内での会話練習にそなえて、Q&Aの練習をする。今日はデートと結婚がトピックとして選択されている。

ええと、結婚したい場合、男の子が女の子の父親にask for a blessingのがアメリカの伝統だそうです。アメリカでは、結婚式の前に行われるパーティーは男女別々(花嫁と女友達パーティ、そして、花婿と男友達パーティ)だそうです。そして、男パーティーでは、酒、葉巻などでcrazyになるそうです。女性は結婚後、旧姓と夫の姓をハイフンでつないだものを、自分のファミリー・ネームとして用いる場合があるそうです(たとえばUmako Risuyama-Hitsujikai)。なるほど、なるほど。羊飼いが万が一アメリカの女性を娶ることになりましたら、参考にさせていただきます。オレゴン大学の学生とのQ&A本番については……微妙なコミュニケーションのズレが苦笑をうんだ、とだけ記録させていただきます。ひとりの可愛らしい女子学生の、わたしデートでお金払ったことないわ、という発言がふと地獄耳に飛び込んできたので、あんただけじゃないの〜、という視線をついむけてしまいました。反省反省。

その後、羊たちはオーラル・スキルズのクラスに向かう。今日は午後の授業がないので、このクラスが終わるとフリータイムになる。

羊飼いは、あるひとに教えてもらった古書店に出向いてみることにする。なんと、求めていた世界がありました。フロアいちめん天井から床まで本だらけ。さっそく物色にかかる。時を忘れて本を見てまわり、2時間が経過する。とりあえず、以下の4冊を購入する。しめて46ドル也。

Richard Brome. The Antipodes.
The Dramatic Works of John Tatham.
The Dramatic Works of John Wilson.
The Dramatic Works of Sir Aston Cokain.

かなりの幸福感につつまれる。

1日はまだつづく。夕方5時(といってもかんかん照りですが)に再度集合して、有能なインストラクターが授業で言っていたLane County Fairに皆してでかける。会場まで30分程度歩く。会場についてみると、結構な人だかりで、さながら移動遊園地+出店といった趣。乗り物待ちをしている子どもは眼をキラキラ輝かせているし、乗り物に乗る自分の子どもを見つめる親たちの視線も熱い。それ以外に、デート中の若者から、年老いた老夫婦までが、このお祭りを楽しんでいる。正直、ジェットコースターをはじめとする乗り物はどれもチープな印象をぬぐえないが、それは問題ではないのだろう。ただ、観覧車のスピードが異様に早いのは問題でしょう。この観覧車では、観覧車が天辺にいったら……なんていう日本的甘美さを実現するのは不可能ですよ。もっとも、みなさん、上空に出向かずとも、地上で十分実現可能なようですがね。

会場に居残る羊たちもいたが、羊飼いは早々にひきあげる。そして、また30分程度歩く。大学の近くを歩いていると、若いニイチャンに質問される。すさまじいスピードの英語で、なにを言ってるか分からなかったが、返答すると、ヘンッという感じで馬鹿にされる。ムカっとする。よし帰ってまたリスニングの勉強してやるよ!

今日は定例のミーティングはなし。いつものサンドウィッチをほおばり1日が終わる。

なにか大切なものが手のなかから滑り落ちていったような気がする……。