ルパン不在

10日。会議が終る10分前ぐらいに姿を現す男あり。学生たちには遅刻など許しはしない政治という学を講じる(久々登場の)ゴルバチョフ先生である。一瞬のキラメキとともに相手を一刀両断してしまう鋭利な斬鉄剣のごとき毒舌と、射程距離に入ったものは撃ち抜かずにはいられないマグナムのごとき眼光を装填した会議の司会は、あえて黙して語らず。石川ゴエモンと次元ダイスケの武器を生来身につけているにもかかわらず、世を忍ぶ仮の姿として数の学を講じている司会のLast Samurai先生が、その威圧感を倍増させたように感じる。この場の空気を笑いに転換してくれることを願ってルパンを探してみるものの、悲しいかな見当たらず。いつものように惰眠を貪るオッサン(別名テリー)だけを視線はとらえる。ああ、小さな部屋が凍てつく大地に変貌する。

* * *

9日。N大の成績処理をしたあと、成績書類を提出しに郵便局に行く。合計250人分の成績を用紙に転記するという作業がまたしても精神に苦行を強いたため、郵便局を出たあと、コーヒー・ショップでしばし廃人と化す。

* * *

8日。N大に最後の文書を提出したあと、研究室にもどって別のN大の試験150枚を採点する。昨日の100枚もそうであったが、論述式問題を2題課したために、採点するのにとてつもない時間と体力を費やす。とりわけ、100枚を超えたあとの残り50枚が精神に苦行を強いる。

Walpoleさんは首相であって芝居の登場人物ではありません。ベン・ジョンソンさんは『世の習い』という芝居の作者ではありません。『ダフニスとクロエ』はイギリス演劇ではありません。「比喩する」という日本語はありません。「猫く」という動詞はありません(「描く」です)。「善劇」というジャンルはありません(「喜劇」です)。シェイクスピアさんはShackespeareとは綴りません。シェイクスピアの時代に「リアリズム」はありません。(以下、省略なり)

まあ、こんなものです……。