京都以後

21日。土曜日だが、研究室で労働関係の雑務をこなす。

高橋哲雄『二つの大聖堂のある町−−現代イギリスの社会と文化』(ちくま学芸文庫,1992)を読了する。イギリス文化論として出色。たとえば、ここで述べられているリヴァプールチェルシーのことをフットボールとの関連でさらに発展させたら、学生も文化論に興味をもってくれそうだ。が、いかんせんそんな授業は担当しておらずぅ……。

花粉多し……。

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20日。休日だが、研究室で労働関係の雑務をこなす。見たくも読みたくもない文のつらなりを転写するのが今日のワシの仕事。

日常に帰る……。

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19日。11時ごろに後輩と待ち合わせて、いざ京都へ。今日はうちの卒業式なのだが、セレブ夫妻のお誘いにあまえて京都観光に繰り出す。待ち合わせが八坂神社さんだったので、そこまでバスで向かう。今日はかなり暖かく、密閉状態の車中に少しイラッとする。

八坂神社さんについたので、そのあたりで少し遅めの昼食をとる。夜になると大人の社交場へと変貌する店のカウンターで2人ならんで家庭料理を食す。その後、よーじ屋でアブラトリガミを買う。もちろんワシの顔も年相応に脂ぎってはいるものの、これはゴマスリ用。

首尾よくセレブ夫妻と合流し、まだ花々でその身を着飾る前の状態にある枝垂桜たちを見上げながら歩く。花の季節には少し早いことを残念がってくださるセレブ夫妻だが、かぼそい枝をむき出しにした枝垂桜たちも、ワシには十分に雅に思われた。いつもとは異なる時間の流れにひたり、ここ数日の無益な硬直が徐々にとけて行った。その後、別の雅な小路にお連れいただいたあと、三十三間堂さんに向かってくださる。

三十三間堂さんでは、これまで写真でしか見たことがなかった光景にただただ圧倒される。お経を唱えるような調子の英語を駆使し、外国人観光客たちに観音像について説明をする女性ガイドさんの甲高い声が耳にふれ、俗世にいることをことのほか実感させられる。その声が去ったあと、いま病の床にいる方のために、手を合わせてそっと十一面千手千眼観世音(中尊)さまにお祈りをする。そして、お線香とお守りをいただく。

その後、高台寺さんにお連れいただく。いまはライトアップがされているため、ことのほか華麗かつ繁盛している。ちょっとしたお祭りのような感じでココロおどる。七色の石庭は不動の幻想世界をこともなげに眼前に用意し、やさしい光のなかに浮きたつ塔は荘厳な姿を圧倒的な力で脳裏に刻み付けてくる。そして、広々とした墓地からはカラスのカアカア鳴く声が聞こえる。一句吟じてみたくなるような雰囲気になる。そして、なんだか行けそうな気がしてくる。

高台寺さんの階段を下りたところで、皆さんの購買意欲につられて漬物などを買う。もちろん、これもゴマスリ用。

その後、雅な食事処に運んでいただき、カモ川を眺めながら豆腐料理をいただく。和服を着た給仕の女性、さらに、料理をつくってくれる男性のたたずまいに、人としての美しさを感じる。食事も絶佳。

食事のあと、少し急いで京都駅に向かい、帰宅の途につく。チケットの関係でセレブ夫妻とは別々の新幹線で帰宅ということになる。今回は何から何までお世話になってしまったので、少し気恥ずかしくなる。ワシももう少し大人にならなければなるまい、と思う京都の暖かな夜。

オン バサラ ダラマ キリク ソワカ……。