ふたたび胸がいっぱいになる

11月11日。『誰もいない国』@新国立劇場。台詞をとばしてしまってもなんとか補ってしまう老獪さ。ピンターを見るたびに思うのは、ピンターはそろそろ別の翻訳者を見つけてほしいということなり。

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11月10日。『修道女たち』@本多劇場鈴木杏は「セカイのニナガワ」の芝居に出ていたころに比べると、各段にすばらしい演技をするようになったと感じる。伊藤梨沙子は声も美しい。それにしても、ふたたび白塗りですな。

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11月3日。後輩氏と待ち合わせをして、午後からオジイチャンのお宅に向かう。20年も行かなかったのに、ここのところ1ヶ月に1回訪問することになってしまったのは、不思議なことなり。オジイチャンのお宅に行くには、最寄り駅からバスを利用することになるのだが、この日はなにやらイヴェントが開催されていたようで、バスがかなり遅れてやってくる。なるほど、川べりにはたくさんのテントがたっていて、いかにもイヴェントが開催されている趣がしている。バスを降りてしばし歩く。オジイチャンの家にはなんとか約束の時間に到着する。インターフォンを押すと、こちらが誰かは名乗っていないのに、「どうぞ」という声がしてくる。オジイチャンの書斎は前回来たときと変わりない。後輩氏は、オジイチャンの本棚から楽しそうに本を選んでは譲り受けていく。「少し休憩を」ということになり、お茶とお菓子をいただく。そして「このオジイチャンんが庭で採取しました」と言って、柿を出してくれる。その柿はたいそう甘かった。「少し持って帰る?」とも言ってくださる。本を選んだり、お茶を飲みながらお話をしたりで、2時間ほど経過してしまったので、そろそろ失礼する。後輩氏と本がつまった段ボール箱を抱えて最寄りのコンビニまでむかい、後輩氏の自宅にそれを送る手配をする。そして、コンビニ付近のバス停からバスに乗る。すると……バスのなかにオジイチャンがいて、お知り合いと談笑している姿が眼にとびこんでくる。気づかれないように、バスの後方座席に後輩氏と陣取り、なりを潜ます。バレたら気まずいからな。帰りの電車でふたたび胸がいっぱいになる。オジイチャンの書斎には、オジイチャンが若かりしころの家族写真が飾られている。思い出すと、なんとも胸がいっぱいになる。ちなみに、今日はワシの誕生日だったな。

涙は流れないけどね……。