真夜中の男

29日。東の京に参る予定であったが、急遽、地元の大学病院に見舞いに行くことになる。ワシ関連ではなく、ドーキョニン関連の方なり。

* * *

28日。某大学に馳せ参じて、ナラトロジー関連の論文を2時間ぐらいかけて解説する。その後、おのれの大学に戻ってThe Renegadoを読む。

* * *

27日。大阪遠征に出かけたドーキョニンが深夜0時近くになって帰ってくる。なにやら不穏な面持ちをしているので聞いてみたところ、家の近くである男の人に声をかけられた、という。家は駅からまっすぐ1本道なのだが、ドーキョニンはその右端を歩行し、男はその左端をドーキョニンとちょうど線対称の位置関係を維持して歩行してきた、という。はじめはまったく気がつかなかったのだが、家に向かうために道路を横断しよとうしたところ、そこで件の男の存在を確認したらしく、確認するやいなや男は「電車のなかで見かけていいなと思って……友達から……」と発した、という。ドーキョニンが穏当な返答をしたところ、男は踵を返して駅の方に歩き去っていった、という。「気持ち悪い」を連呼するドーキョニンだが、ワシはと言えば、なにやら解せぬ想いにとらわれる。丑三つ時にはいささか早すぎる時間帯だし、駅からの1本道には神社はあるものの稲荷ではないし、狸が生息しているほどの山間地帯ではないし、未確認飛行物体が着陸するスペースは近辺にはないし……。幽霊であろうと、狐であろうと、狸であろうと、宇宙人であろうと、ナンパという行為におよぶのに時を選ぶことなどできない、ということか。一言で言うとしたら、いささか古色蒼然の感ありだが、「今でしょ」ということか。「まあそれにしても立ち去ってくれたのだから、不審者でなくってよかったね」と述べたら、「いやいや十分不審者でしょ」と返される。

春が来た……。