最後の亀さん

N大図書館で資料をコピーする。正確な書誌データを把握していなかったため、某誌のバックナンバー約10年分を総ざらいし、疲れる。休日の誰もいない書庫の片隅で汗をかく。その後、ドトールで、Stephen Greenblatt, Shakespearean Negotiations: The Circulation of Social Energy in Renaissance England (U of California P, 1988)のイントロダクションを読む。はじめてこれを読んだのは、もう10年以上も前だが、そのときの印象は今でも忘れられない。"I began with the desire to speak with the dead"(1)ではじまるシェイクスピアの研究書なんて、当時は理解不能でした。

「あるイギリス人に関するインドの話−−少なくともインドの話だと私は聞いたが−−がある。これは次のような話である。世界は台の上にのっていて、その台は象の背中にのっており、象は亀の背にのっているといわれたイギリス人は(おそらくこの人は民俗誌学者だったのだろう。これは民俗誌学者が行うやり方である)、それでは亀は何にのっているかと尋ねた。それは別の亀にのっているという。ではその亀は何にのっているかと尋ねたところ、『ああ、サヒブさん、そのあとはみんなずっと亀にのっているのですよ』といわれたという」(「厚い記述」49ページ)

最後の亀さんはその顔を決して見せてはくれない。それがわかっていたとしても、無数につづく亀さんをひとつひとつ追っていくこと、これが文化の研究だとギアーツ先生は説く。

Michael Cordner and Peter Holland, ed. Players, Playwrights, Playhouses: Investigating Perfomance, 1660-1800 (Palgrave, 2007)が家に届けられる。蓮實重彦大江健三郎論』(青土社,1992)を古書で買う。

一日乗車券を片手に街をめぐる1日……。